20年ぶりの円安とアメリカの利上げとの関係性は?

マスコミでは20年ぶりの円高と騒いでいて、1ドル135円を突破した。この円安水準は2002年1月〜2月に
つけた円安水準となり、2002年には135円を頂点にその後は円高になり4ヶ月後の6月には120円まで
円高にふれている。

今後、135円を突破してさらに上を目指すのであれば、1998年の8月〜9月の145円まで下落する可能性も
でてくる。今のところはテクニカル的にみると135円を突破するかの攻防で、まだ、どちらに行くかは
方向感はみててこない。

※ドル円チャート月足

いったい何がおこって20年ぶりの円安になっているのか

アメリカがコロナ蔓延で財政出動を行い、金融緩和で大量にドルを印刷してコロナ対策と銘打って市場に200兆円ものドルをばら撒いた。

失業手当は通常の金額に上乗せされ給付され、失業中にも関わらず、給与以上に収入が増えた一般人はコロナで外出もできず、使うことなく、余剰資金ができたアメリカ人は元々、投資をする文化というのもあって株にこぞって
投資をした結果、コロナで大暴落したものの、その後はNYダウは右肩上がりの大相場となり、アメリカ人の
余剰資金がどんどん、増えていった。

※NYダウ週足

アフターコロナのアメリカはインフレでレストランスタッフで月収100万

アメリカ人の膨らんだ資産は購買意欲を爆発させるが、コロナで停滞していた船便の物流が通常通りの
物資の供給を妨げ、購買意欲で需要は爆破しているが物が不足している事態となり、物価は上昇していった。

その後、コロナは落ち着き街は通常を戻しつつあったが、コロナで資産が増えたアメリカ人は働くことを渋り、
雇用の流動化の激しいアメリカではコロナで一時的に解雇した人材は労働市場へは戻ってこず、求人をだしても
人は集まらず、さらに高い時給で求人をして人材を奪い合うという現象が起こり、インフレに拍車をかけた。

アメリカの一般的なレストランのホールスタッフは月収5,000ドルとプラスチップ2,000ドルが標準的な
報酬となっており、現在のレート135円で計算すると日本円で945,000円が1ヶ月の賃金となっている。

レストランのホールスタッフは特に報酬が高い職種ではないはずなのに、アメリカの賃金水準では月額100万円
となり、消費者物価指数も8%とインフレ目標4%の2倍の水準となっている。

日本と比較すると時給1,000円で1日8時間で20営業日だと16万なので約6倍の賃金水準になっている。

 

アメリカと比較した日本

日本もアメリカ同様にコロナで円を刷ってコロナ給付金として10万円を全国民にばら撒いたり、飲食店への
給付など30兆円の予備費を計上して総額70兆円越えの対策をおこなった。

しかし、デフレマインドが染み付き、さらに投資に消極的な日本人はアメリカ人とは対照的にばら撒かれた
日本円を貯蓄し、コロナで使われなかった日本円は50兆円が貯蓄され、これが強制貯蓄となり消費マインドは
弱く、物価上昇率はエネルギーと生鮮品を除いては0.8%とアメリカの10分の1にとなっている。

日銀の黒田総裁の物価上昇率の目標は就任当初から4%とコミットしており、まだまだ達成にはほど遠く、デフレ
脱却とはなっていない状況が続いている。

物価目標4%を達成するには本来であれば日銀が金融緩和で日本円を刷り、刷った日本円で財政出動をして
GDPギャップを埋めて物価を上げ、消費を刺激して賃金を上げることをしなければならない。

しかし、岸田政権は財政出動を拒み、何もしないことで支持率を維持して参議院選挙に臨む姿勢となっている。

日銀としては物価目標が達成していない以上、日本円を刷って国債を購入して市中に日本円を増やす、量的緩和を
する以外に方法がないのが今の状況である。

対ドルで円安になる理由は通貨の量の違い

中央銀行は金融緩和をしながら失業率とインフレをコントロールするのが役割なので、アメリカは失業率が下がり
賃金があがっているのであれば、金融緩和して失業率を下げる目標は達成している。

しかし、失業率を下げると反面、賃金が上昇してインフレとなり、物価目標の上振れを修正する必要がある。

本来は失業率を下げ、完全雇用の状態にしてインフレ率4%を維持することがバランスが取れた政策だが、
失業率とインフレ目標をバランスさせることは困難で、インフレ率が上がったら金利を上昇させて景気を
ゆっくり冷やし調整していく。

しかし、コロナで需要と人手不足が爆発してしまったアメリカでは許容し難い、8%の物価上昇となり
FRBは金融政策の引き締めを実施して金利を上げ市中のドルを減らす政策を実行することになる。

一方で日本はインフレ目標の4%達成するまで金融政策は続けると黒田総裁が発表しているので日本円は
市中に増え続け、反対にドルは減っていく構造となる。

円が増え、ドルが減ればマーケットメカニズムで円の希少性はなくなり、逆に減ったドルの希少性が高くなり
自然と円安ドル高になるというごく普通の現象が起きている。

さらに日本の金利は限りなく年0.25%でアメリカは年3%なので円で資金を調達してドルで運用すれば
為替差損のリスクを考えなければ利ざやが2.75%となるので円で資金を借り、ドルに変えてアメリカ国債を
購入する動きが活発化するのでさらに円安が加速することとなる。

まとめ

20年ぶりのドル高円安はコロナにより財政出動した各国で通貨が大量に増え、アメリカはいち早くコロナから
立ち直り、消費が爆発することで人手不足になり、賃金が上昇してインフレが許容できない状況になり
FRB(アメリカ中央銀行)が利上げをしている。

一方の日本はコロナから立ち直っておらず、まだまだ好景気といえるほとのインフレにはなっておらず、
さらに岸田政権の対策が不十分なので緊急緩和は継続となる。

よって、日本円は増えドルは減ることでマーケットメカニズムにより増える日本円は下落して、ドルは上昇となり
さらに日本の金利とアメリカの金利の差分でエンキャリートレードが発生して円売りドル買いの動きが加速して
結果、円安ドル高となっている。

 

コメント